my LIFE as HERMIT


「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その6)」(デス見沢A・篇)

(文中1ギルダー≒66円)

 

 

アムステルダム

 「タスケテ〜!」

 …なんだなんだオイ。って、ここってオランダだったよなあ。なんで日本語で「タスケテ〜」なんだ? だいたいこんな夜中に…

 と、突然カギがかかっているハズの部屋のドアがバーンと勢いよく開けられた!

「?????」マジでユーロマフィアの襲撃か? 俺、何かヤバいことやったか? やっぱりあのインド人が…

 ………………………………? ドアは開けられたが別に誰がはいってくる気配もない。

デス見沢A「今、タスケテーって聞こえたんだが、俺の幻聴だろうか」

デス見沢F「いや、あたしも聞こえたけど…」

デス見沢A「なんでドアが開けられたんだろう…あ、もう朝なのか…」

 おそるおそるドアの外を覗いてみる。

黒人のオバチャン「あ、やっと起きたかい。部屋掃除するんだから、さっさと朝メシ食ってきとくれ」

 ものすごい怖い起こし方をするんじゃねえ! あーマジでビビった。ただでさえガンジャが残ってて不安になってるっていうのに。まあ確かに目はサメたが。

 

 朝メシを食いに1回の食堂に行く。今のオバチャンの目覚ましでガンジャの副作用の不安がぶり返した。メシをくいながら今日の予定を立てる。今日は副作用の治療のためにハイネケン博物館で迎え酒をしたあとゴッホ美術館で邪悪なるアートを見て心なごませる事に決定。

ハイネケン博物館 飲み放題という噂

 

 ハイネケン博物館は2001年五月まで改装のため休館だと。博物館まではタクシーできたが、運河ぞいに行けばゴッホ美術館まで遠くないというので歩く。途中、道がわからなくなったので通り掛かりのカップルに道を聞く。

「すいませんれ、バッホ…バッハ…ボヒャ…」

 うひゃひゃ、口がぜんぜんまわらねえ。カップルはいきなり怪しい東洋人にワケのわからない事を言われて引きまくっている。Fが「ゴッホ美術館」とフォローを入れる。「あ、それだったら私たちも行くところなんで、一緒に行きましょう」ということになる。しかし、俺たちの半径5メートル以内には近づこうとしない。

 ゴッホ美術館到着。エジンバラの時同様、トランシーバーのような日本語音声ガイドを持たされる。入場料は15ギルダーぐらいだったか。二階がメインのゴッホの絵。浮世絵の模写とかあった。「烏のいる麦畑」のシリーズはいつ見てもよい。不安な絵を見ると不安な心がやわらぐ。「ひまわり」のガイドの所で「この『ひまわり』のシリーズの一つは、どっかのバカ成金国家の一企業がバブルの時に金にモノを言わせて買い取り、買った後は公開するでもなく観賞するでもなく倉庫にしまいっぱなし、あげくのはてには死んだら絵も一緒に焼いてくれなどいう神をも恐れぬ恥知らずで鬼畜で低能で文化というものに対して理解のカケラもない黄色いサルが(注:一部誇張だがフランス語で聞いたらたぶんこんなこと言ってるに違いない)」などという解説があり、アーティストとして恥じる。

 昼メシ。食堂では何故かスシが売っていた。オランダでスシもないだろう。無難にサンドイッチとビールを摂取。売店で「烏のいる麦畑」絵はがきセットを買う。

 

 美術館にはけっこう長時間いた。ゴッホ以外の展示も面白かった。だいぶ症状も改善されたので、美術館を出て運河沿いにブラブラ歩く。

 

運河 ドブ臭くない

 歩いてると…臭うなあ。草の燃える臭いが。お灸のような。

 というわけで、症状もおさまったので、運河沿いのコーヒーショップにはいる。ヤバい。ハマったかも。これ、日本で禁止してないと、俺こればっかりやってそうだ。怖るべし。今度は「パープルヘイズ」という奴を買う。2グラム30ギルダー。またフラフラになるとヤなので、持ち帰って後日ホテルでやることにする。

 

 しばらくアムステルダム市内をブラブラ散歩。道に迷う。アムステルダム市街は一見碁盤の目だが、実は同心円状に拡がっており慣れないと迷う。で、だんだん日も暮れてきて、また不安になりだす。まあ都会で夜にフラフラしてるとロクなことはないのは事実なので、とりあえず明るいほう明るいほうに向かって行くと、なんとか駅前についた。途中黒人のおねえゃんとぶつかる。スリか? と思ったが、ぶつかった相手のほうが死ぬほどびっくりしていた(さっきのカップルと言い、そんなに俺、怪しいのかなあ)。俺が前を見て歩いていなかったためと判明。

 

 夕メシを食う。きのうの夕メシは結局ワケわかんなかったので、今日はちゃんと食おう。ちょっとだけ裏の通りのタイ料理の店に行く。魚の唐揚げのあんかけと肉野菜炒めを食う。ウマい。食ってると、今度は白人のオバチャンの物売りが勝手に店内にはいってくる。あ、アムステルダムってそんなもんなのか。了解。なんだかんだ言われて100円ライターを買わされる。やはりオバチャンは強い。

 異常に量が多く、すごい腹キツくなったのでまた散歩。よく見るとこの裏通りはなかなか怪しい。インターネット・カフェではなく、インターネット・コーヒーショップってのがある。ヘロヘロになって書き込みとかしたらメチャクチャになりそうだ。ちょっと入ってみる。例によって誰もガンジャなどやってはおらず、健全にインターネットをやっている。日本のと同じ。日本語表示になってるマシンもあった。

同じ通りに並んでる店は他に、ポルノショップ(全見せなので日本人にはちょっと…)、ゲイショップ(なんか多い)、ふつうのコーヒーショップはもちろん、こんな店もあった。

ネットとかアングラ雑誌の広告ではよく見かけるが…

 

 キノコ系はマジで戻らなくなることがあるのでパス。で、こういうショーウインドーの写真とか撮ってると、すれ違ったフランス人中坊が「ったく日本人が…」と言ったのを確かに聞いた。周囲にアジアンはいなかったので完全に俺のことだな。そもそもフランス人はドイエ以来日本人にとっては宿敵であり、この場合も喧嘩売ってると見做し鉄拳制裁の対象であるが、ホントに殴られたら折れそうなひよひよの中坊だったのでまあかんべんしてやろう。

 

 ホテルに帰る。ちょっと横になる。さっそくデス見沢Fが「パープルヘイズ」をやろうとしているが、火がつかない。俺はさすがに今日はヤメとこうと思ったが、火をつけてやるくらいならいいだろう。

デス見沢A「こうやって、吸いながら火をつけるんだって。こうやってフカして」

デス見沢F「こう? あれ、消えるなあ」

デス見沢A「だから、こうやるんだって」

デス見沢F「こう?」

デス見沢A「そうじゃなくて、こ…

きわんきわんきわんきわんきわんきわんきわんきわん) 

あ…効いた…俺ちょっと横になるわ…」

デス見沢F「あー! まったく自分だけ〜」

 

 今回は吸った量が少ないのと、もともとマイルドな種類だったようで、じんわり効いた。しかし酒や向精神薬の効き方とは明らかに違う。酒は体が「熱を持つ感じ」になるが、ガンジャは「電気を帯びた感じ」となる。で、今回はなんか良い効き方をしているようだ。音がすごくよく聞こえる。テレビのオランダ語がすごくよく聞き取れる。意味がわかりそうな気もする。まあドイツ語と似たようなもんだから注意して聞けばわかるんだとは思うが。

 それから、心が穏やかになる。なんか全てを許したくなる感じ。憎悪の感情がなくなっていく…と、それはダメじゃん! 憎悪や嫉妬や憤怒とかいうネガティブなエネルギーこそが俺の本体! したがって憎悪や憤怒の感情が消えた俺は俺でなくなってしまう! したがって、緊急事態として俺の存在をかけて俺の「黒い心」を守るため「心のパレスチナ自治区」を作ることを宣言する。ああ、白い心のイスラエル軍がガザ地区を侵略している…ほ、ギリギリでパレスチナ軍が防衛してくれた。あ、今度は東ヨルダンで侵略が…

 

 こうやって、一時は俺の心の9割くらいが「白い心」に占領されかけたが、なんとかもちなおして黒い心3割くらいになった。あぶねえあぶねえ。まあ真っ黒になるのもダメだと思うが真っ白よりはいいのではないかと。真っ白だと生きていけなくなるもんねえ。

 9割が白い心だった時には、もう全てのものを賛美したくなり、デス見沢Fに「何かホメるものはないか、俺にホメるものをくれ」と言っていた。そしたら「ハイ」といって「地球の歩き方」を投げてよこした(てきとうだなー)。

「ああ、まずこの本の装丁のデザインが画期的だよな、単純なデザインの中にも深いものが…。そもそもこのトラベルガイドが、どれほど俺の旅の役にたっているか…。いや、それだけではなく、世界の国の文化の理解というものを…」

 いくらでも言葉がでてくる。昨日のことといい、なんか芸術のドーピングみたい。しかし、こういう薬物に頼る芸術はよろしくないのではないか、とも思う。出来るもの、みんな同じモノになってしまいそうで。

 調子にのって絵はがきとかも書く。明日投函しよう。

つづく

「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その5)」(デス見沢A・篇)

「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その4)」(デス見沢A・篇)

「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その3)」(デス見沢A・篇)

「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その2)」(デス見沢A・篇)

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