my LIFE as HERMIT
「インドでわしも考えた変」(その1)

(文中1ルピー=3.5円)

帝国〜羽田〜成田〜デリー
 

 全く幸先のイイ出だしだ。
 

 空港に着いたら雪のため羽田行きの飛行機が2時間遅れていた。まあ欠航にならなかっただけマシか。JASから1000円分の食事券も貰ったし。関係ないが同じ便にマイケル・ジャクソン(アメリカ版鈴木その子でなくて酒の評論家のホウ、アル中)も乗ってた。まあ誰も気がつかなかったがな。地ビールの宣伝か何かだろう。まあとにかく飛行機は飛ぶことは飛び、水平面から20度傾きながら3回程バウンドしつつ乗客の悲鳴と共に羽田に着陸した。この路線は障害物となる山とかがなく離着陸が比較的簡単なため、初心者パイロットが機長をしているラシイとの噂あり。真実だと確信スル。
 

 結局羽田に着いたのは午後10時過ぎ。前泊として成田に宿を予約していたのだが、これがまず間違いだった。
「成田行きのバスのチケット一枚」
「ああ、成田行きは9時半で最終だったんですよ。もうすぐ千葉行きのバスが出ますのでそれで千葉駅まで行って、あとはJRを乗り継いで下さい」
 

 前から思ってたが、この成田空港っての、世界で一番使いづらい国際空港だなあ。都心から異常に遠いし、国内線空港である羽田とのアクセスは最低だし。タクシーなんか使ったら何万円かかるんだろう。でまあとにかく、千葉駅から酔っぱらい満載+床ゲロまみれの成田行き最終電車ジャンタ・エキスプレス*に乗ったワケだ。もはや既にインド憑いてると思った。隣に座ってたドイツ系の奴が、何回もため息つきながら小声で「アジアはこれだから嫌なんだ」みたいなことを言っていたのを俺は聞き逃さない。
*ジャンタ・エキスプレス…インドの二等オンリーのロウカースト用列車。金払って乗る奴はほとんどいないらしい。当然いつもスシ詰め。ツーリストは普通乗らない。

 で、えーとまあとにかく成田で泊まって、次の日昼の12時発のエア・インディアに乗った。スッチーがサリーなのが新鮮。乗客の比率は男:女=1:1、日本人:外国人=1:1くらい。そんなもんか。

 …飛行機に乗ってから一時間経過。二時間経過。現在午後2時。飛行機は1ミリも進んでいない。アナウンスは「当機整備のため、もうしばらくお待ち下さい」というだけ。さすが悠久のインド、初手からやってくれる。で、やっとエンジンがかかり始めたと思ったら「皆様、大変長らくお待たせをいたしました。当機はこれよりバンコクに向けて出発いたします」
 え゛え゛っ? 乗る飛行機を間違えた? と思ったらそういうワケではなく、この飛行機は成田〜バンコク〜デリー〜ボンベイと列車みたいに乗客を乗せたり降ろしたりしながら進んでいくらしい。だからうっかり寝過ごしてたらボンベイまで行ってしまう、ということだ。合理的といえば合理的か。だったら山手線みたいにして世界一周航路でも作ればいいのに。

 カレーの昼食の4時間後、おやつとしてサモサ(カレーコロッケ、量的には一食分くらいある)が出て、それを食べ終わる頃にバンコクに到着。降りたのは全員日本人男子(オヤジ割合多し)。何しに行くんだろう。ぼくこどもだからわかんないや。で、かわりにどどっとインド人が入ってくる。これで日本人の割合は30%くらいになった。しかし、インド旅行する日本人女性ってな多いなあ。さすがに一人旅の女性は少ないけど。何か引かれるのかなあ。飛行機は一時間後バンコクを出発。出発後すぐ夕食。当然のようにカレー。

 で、やっとインドの話が出来るワケだ。飛行機は3時間遅れて真夜中の0:30にデリー国際空港に到着。インドでは飛行機が遅れるなんて普通のコトだから空港は24時間やってるし、市内へのバスも24時間、30分ごとに出ている。どっかの国の自称国際空港、見習えやコラ。でまあ、とにかく両替だ。インドルピーは国外持ち出しは禁止だから、インド入国後でなければ両替できない。上にも書いたように1ルピー=3.5円なんだが、ルピーってのは100ルピー札までしかないんだ。だから、1万円をルピーに両替すると


これは3000ルピー。普通100枚ごとにピンでとめてある。「地球の歩き方」には
穴の開いた札は替えてもらえって書いてんだけど、ほとんど全部の札に穴開いてんですけど…

 だいたいこのくらいにナル。でまあ一応3万円くらいは両替するわけだから、そりゃあもうとうてい財布には入りきらない。上着のポケットとかに分けて持ち歩く。まずこれで最初に金銭感覚が解らなくなる。恐るべしインドマジック

 市内へのバスは20ルピー。でも長いこと飛行機に乗ってたから、これからバスに乗るのもかったるい。しかも気温は摂氏11度で予想よりずっと寒い。タクシーにしようと思ったが、インドのタクシーはボル上に絶対に目的地に行かずにマージンの取れるホテルに行ってしまうという。そこで間をとってプリペイドタクシーに乗ってみよう。これは最初に空港のカウンターで目的地を言って金を払ってチケットを貰い、そのチケットを持ってタクシーに乗ればそれ以上の金はビタ1ルピーも払わなくていい、というインド観光局の考えだしたモノだ。デリー中心部のコンノート・プレイスまでだいたい200ルピー。で、チケットを持ってプリペイドタクシーに乗ろうと空港を一歩外に出たとたんに
「ヘイ、プリペイドタクシーはこっちだぜ」
というとてつもなく怪しい若造にチケットをひったくられる。当然俺はチケットをひったくり返すが
「ノープロブレム。チケットはちゃんと返すよホラ。いいかい、タクシーはここで待ってればいいんだ」

 この時俺はそいつをタクシードライバーだと思ったんだな。こいつはプリペイドでないタクシーのドライバーで、どうせあとから何だかんだ言ってボルつもりなんだろう。でも面白い。いっちょう騙されたふりしてひっかかってやるか。イザとなってもこのアンチヤン程度だったら向こうが刃物持ってても勝てる。この前デリーの空港の近くで日本人学生が死んでたというのがあったが、それはそいつが弱かっただけのことだ。

 で、アンチャンと俺が待ってるとタクシーが来た。あれ? このアンチヤンがドライバーなわけじゃないのか! さてはこのドライバーもグルか。二人相手か…まあなんとかなるだろう。とりあえずタクシーに乗り込む。当然のようにアンチャンは助手席に乗り込む。ドライバーは黙っている。タクシーが走り出すとアンチャンが後ろを向いて話しかけてくる。
「日本から来たのかい?」
「そんなことどうでもいいだろ。コンノートプレイスのホテル・ランジットに行ってくれ(日本で予約したホテル)」
「アイシー。解ってるよダンナ。ところでデリーは初めてかい?」
「二回目だ(大嘘)。ホテル・ランジットだ、いいな」
「…前回はいつ来たんだい?」
「関係ないだろ。…5年前くらいかな(もちろん嘘)」
「ヒュウ。5年前かい。5年もたつとデリーも変わるからねえ。ところで僕はこのホテルを知らないんだが、たぶんもう無くなってると思うよ」
「お前がそのホテルを知らなくても俺が知っている(実は知らない)。場所知らないんだったら、コンノートのBブロックのあたりでいいから降ろしてくれ」
「夜のコンノートは危険だぜ。それより、僕はグッドなゲストハウスを知っているんだが」
「(きたきたきた)そうか。それはよかったな」
「…そんな場所の解らないようなホテルより、僕はこっちのゲストハウスをおすすめするね」
「ありがとう。でも、俺はこのランジットホテルという所に泊まらないと、俺の所属するカンパニーにペナルティを払わなきゃいけなんだ。100ドルのな(おもいっくそ出鱈目)」
「…アイシー。コンノートのBブロックでいいんだな」
うははは、勝った。それっきりアンチャンは黙ってしまった。

「ほら、着いたよ。コンノートだ」
「サンキュー…ってオイ、どこだここは? なんだこのゲストハウスは」
「だからここのゲストハウスにしなって。ほら、他の日本人も泊まっている(前のタクシーから誰か知らない日本人がそのゲストハウスに入っている)」
「あんな日本人など知らん! とにかくコンノートに行け!」
「コンノートはここだよ…(一応、そこの場所は本当にコンノートのBブロックではあった)」
「嘘をつけ! わかった。俺は歩いて探す。じゃあな」
モメてると、リクシャー(スクーターの後ろに人が乗れるようにしたもの、近距離移動用)たちがいっぱい集まってきた。


(オート)リクシャー(手前の女子はかんけいない)

「ランジットホテルなら俺が知っているぞ」
集まってきたリクシャーの一人がそう言った。
「そうか! よし、ランジットまで行ってくれたら10ルピー出そう」
「アイシー。でも、本当にそこでいいんだな」
「(?)いい。とにかくそこに行ってくれ」
「とりあえず俺はお前をそこに連れていくが、あとは知らんぞ」
わはは、今度こそ勝ちだ。インドではゴネたら勝ちだ! インド初勝利!

「ほらよ、ここがランジットだ、じゃあな」
リクシャーは10ルピーを受け取ると去っていった。
うむ、確かにホテル・ランジットと書いているが…扉が閉まっている。電気が消えている。扉の前に誰か立っている。初老の紳士っぽいインド人だ。
「ランジットに予約のお客さんかい、ジェントルマン」
「ああ、そうだ。バウチャーもちゃんとあるぜ」
「残念だが、今日はこのホテルはストライキだ」
「ストライキ〜?」
「旅行会社に連絡したらこのホテルの予約代は戻る筈だ。かわりに同等のランクのホテルに連絡しといた。そこのリクシャに乗って行ってくれ。あ、あとデリーではこのランクのホテルはたいてい11時でクローズドだが、これから行くホテルはちゃんと君のために開けとくようにワシが言っておいたからな」
あー、それでさっきのリクシャーは「本当にそこでいいんだな」と言ってたのか。振り返ると、さっきとは別のリクシャーが待っていた。い、いつの間に?

 まあ結局ランジットと同等のホテルには泊まれたわけだが(部屋はとてもきれいで広く、バスタブもあってお湯も出て一泊100ドル、まあ妥当なところ)これだったら最初のゲストハウスに泊まっても同じだったかなあ。いや、あのゲストハウスはボロっちかったから、やはり俺のとった行動は正しかったのだ。かなあ。わかんねーよもう。うう、初日からインド恐るべし!

今回の結論:デリーではホテルを予約しても無駄

つづく

「隣の印度人変」

「大阪変」「ハッカー変」

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