my LIFE as HERMIT


「戦場のメリー・クリスマス・イン・サマー!?変(前編)」

 昭和20年5月8日 北海道某市

 

「おお、ヨメさんよ、今日はいい話あんだよ。ドイツあるだろ、ドイツ。昨日降伏したってよ」

「…また共産党のアングラ情報でしょ、それ。ねえ、もう共産党とつきあうのヤメてよ。そろそろ近所の人も気がつき始めてるみたいな気がするし…」

「何言ってんだよ。俺が共産党員だからこそ、戦争が起きてもこうやって徴兵にもとられないでいるんじゃねーかよ。どっちらしろなあ、もう戦争終わりだよ終わり。日本ダケじゃどーしようもねーもん。いやー今回の戦争はけっこう死んだよなあ。近所で成人した男で生き残ってるのって俺だけじゃねーか? そりゃあ近所の人も変だと思うわなあ」

「いや、戦争はあたしも嫌いだから早く終わってほしいんだけどね…でも、戦争終わったら、この国、どうなっちゃうのかなあ?」

「あ、ソレも大丈夫。北海道はソ連の一部になるから。だから共産党員の俺はそのまま官僚。いままでみたいにずーっとヴァイオリン弾いて絵描いて暮らせるんだよ。いや、今までみたいに生活のための活動写真のポンチな曲なんてやんなくていいんだ。クラシックばっかり弾いてても給料出るんだゼ。最高じゃネエか、オイ」

「まあ、そう簡単に事が運べばいいんだけどねえ…なんかイヤな予感すんだよね、あたし」

「だーいじょうぶだって。そうだ、戦争終わったら一緒にシベリア鉄道でヨーロッパ行くぞ、ヨーロッパ。俺は前に船でロンドンとベルリン行ってきたけど、いーぞーヨーロッパは。音楽も絵も日本とはレベルが違う。食い物もウマいし」

「それ、もう100回くらい聞いた。あたしはあんまり行きたくないんだけどね、そんな恐そうなとこ…。だいたい、キミだけだって、今の時代に一般の日本人でそんな海外旅行しまくってる人なんて」

「そんなんミュージシャンの特権だもん、使わないホウが損だべさ。船内室内楽団のヴァイオリニストとして船乗ってヨーロッパ行って帰ってきたら100万貰えるんだよ100万。好きな音楽やって海外旅行して金もらえるんだからこんないい商売はないよなあ。バンドマンはどこでも無銭旅行出来るってことはブルームオブユースも証明してるし」

「誰それ」

 

 俺は今北海道の某市で、活動写真館のバンドマンをやって生活している。まあ最近はトーキーばっかしで俺の仕事はどんどんなくなって行ってるんだが、どーせ戦時中なんで給料は出ないからまあ現実には何もしないでプラプラして生活している。まあいわゆる「非国民」だな。なんたって非合法バリバリ、今のオウムより嫌われてるレッキとした共産党員だし。あ「今」って昭和20年だった。いや、独り言だ、なんでもない。したがって戦時中で乏しいハズの食料も、まじかる裏ルートくんで楽勝にゲット出来る。子供二人いるけど楽勝。やっぱミュージシャンはどんな時でもはたらいちゃいけないよ。

 とにかく、この戦争はもうオシマイ。俺の共産党アングラ情報では8月くらいにソ連が参戦して満州と北海道を占領するらしい。日本は…どうなるのかねえ。まあ知ったこっちゃネエや。国がなくなっても俺は俺ダシ。あれ、誰か来た。

 

「デス見沢さーん」

「誰だろう。郵便かなあ。俺に郵便出す奴なんざ…ゆうび…あっ! ヤベエ!

「! まさか! だってさっきキミ、戦争はもうすぐ終わるって…」

「もうすぐ終わることは確かだが、まだ終わってはいないんだよ! だから徴兵もまだ有効だ。…まあ違うかもしれないから、とりあえず出てみよう」

出ると、郵便局員がにこやかな顔をして立っている。

「デス見沢さん、おめでとうございます」

やっぱりか。おめでとうじゃネエよバカヤロウ。

「それでは、御武運をお祈りいたしております」

行き先は…よりによってハルビン(満州)だよ。くっそー完全に死ににいくようなモンじゃねーかコレわ。8月にソ連が来んだよソ連が! しかし、俺まで徴兵しなきゃならネエとは、よっぽど南方で兵隊が死んだんだなあ。満州に派兵ってことは、南方はもうあきらめたってことか。

「ねえ、どーすんの…」

ヨメさんが涙目になっている。

「心配すんな。世渡りの天才デス見沢様を甘く見るんじゃねえ。2週間だ! 2週間で何事もなくこの家に帰ってきてやる! 満州では8月に戦争が始まるワケだから、要はソレまでにココに帰ってくれば兵役の義務も果たしたことになるから、オメーも俺が兵役行かないからって肩身狭い思いをすることもネエだろ」

 

 

つづく

コルホーズの玉ネギ畑!!変

「オーヴァー・ザ・レインボウ!!変」(デス見沢デス彦17號篇)

「守ってあげたい!?変」( by Picatyuu)

リラクシン・アット・カマリロ!?変(デス見沢デス彦17號篇)

ドイツの科学力は世界一ィ!デス見沢・F・デス彦

ドイツの科学力は世界一ィ!変(デス見沢デス彦(A)篇)

印度でわしも考えた変

「隣の印度人変」

「大阪変」「ハッカー変」

戻る