my LIFE as HERMIT


「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その4)」(デス見沢A・篇)

*メアリーってのはスコットランドの昔の女王

(文中1スコットランドポンド≒160円)

 

 

ミュッセルバラ〜インヴァレスク

 朝メシを食った後、テレビでポケモンを見る。「ポンキッキ」とか「おかあさんといっしょ」とか「おはようこどもショー」みたいな子供番組の一コーナーとしてやってた。初めて見たので登場人物の人間関係がよくわからない。とにかく「ピカチュウが強い」ということだけわかった。あと、モトの子供番組全体に、イギリス風の悪質なジョークがところどころ見受けられて(毒はかなり薄められているが)、ヨーロッパの子供はこうして正しくひねくれて育っていくのだなあと感銘を受ける。子供は健全な番組など見たくはないのだよ。俗悪な子供番組の制作希望。

 

 今日はこの家族旅行なごやかホテルは最終日で、エジンバラの近くにあると言われている「マナーハウス(古城ホテル)」に宿を移す。古城ホテルは、地元でも大人気のため予約とるのは大変らしいが、観光シーズンを過ぎていたのでなんとか予約成功。場所は昨日行ったので楽勝。むこうのチュックインの時間までどっかにドライブに行くこととする。協議の結果、ちょっと遠いが「スコティッシュ・シーバード・センター」という所に行ってみることに決定。

スコットランドはこういうどんよりした風景が延々と続いてさわやか

 今回は時間に余裕があるので、風景を楽しみながらゆっくりとドライブ。鉛色の空。30分くらい走っても人家も対向車もいない(昼なのに)石だらけの荒れ地。丈の低い草。黒い海。まるで道東・道北を走っているようでなごむ。

 シーバード・センターのあるNorth Berwickの街に到着。ヨーロッパはドラクエのように「街」と「フィールド」がはっきりしていて、いきなり人口が多くなる。また駐車違反をとられてはかなわないので、無料駐車場をみつけて駐める。田舎の街にはだいたい駅みたいな所(鉄道がない場合はバスセンターみたいな所)があって、その近くにはだいたい無料駐車場がある。日本と同じ。

シーバードセンター

 なんだか山小屋みたいのを見つける。遠くから見ると小さく感じたが、実は中は地下3階建てで、岸壁に向かって建てられおり、ここから見えるのはその一番上の部分だけだったのだ。しかも中はかなり近代的な作り。いわゆる「科学博物館」ってヤツですな。うーん、今回の旅はなんか修学旅行みたいだ。木刀とか売ってたら買っていこう。

 中にはカフェもある。ひととおり海鳥を観察したり海鳥の種類や生態や骨格などについて勉強したあと(何故ここに来てまでそんな勉強をしなければならないのか、という疑問は考えないものとする)、カフェでティータイム。ケーキとお茶んまい。しかし、スコットランド来てからケーキばっかり食ってるなあ。一日に5キロくらいずつ太っていってるんじゃなかろうか。わざわざ外のテラスで風にあたりながら、荒れ狂う冬の日本海、じゃなくて北海を見ながらケーキと茶を食す。さぶい。

♪しれェ〜とこォ〜のみィ〜さあ〜きにィ〜

 帰りに土産物屋でインチキな漢字がプリントされた(読めない)ニセ東洋風マグカップを見つけるが、荷物になるので買わない。鳥マニアのFはパフィンのぬいぐるみを嬉々として購入する。木刀と三角のペナントはなかった。キーホルダーは少々迷うが買わない。

 そろそろいい時間。マナーハウスは山の中にあるので、いちばん近くのミュッセルバラという街でいろいろ買い物する予定だが、とりあえずマナーハウスにチェックインして、荷物を置いてこよう。

 

 マナーハウスは「インヴァレスク」という場所にある。インヴァレスク村はたぶんこのマナーハウスの持ち主の「領地」なのだろう。テニスコートとか、使用人の家とか、各種屋敷があるが、たぶん全部個人の所有物なのだろうなあ。で、宿泊客に貸して、維持費のタシにしているのだろう。宿の隣にはこんなものまであった。

ボタンをおすと はかばからぬけます

 たぶん、ここで暮らしていた代々の住民の墓なんだろうけど。ここらへんって土葬なんだよなあ。ちゃんと焼けよなあ。この写真、ひょっとしたら霊が写っているかもしれないが、霊が見えた人は来年はラッキーな年になりそうです。

 で、予約しておいた「インヴァレスク・ハウス」を見つけ、チェックインしようとするが…この家、ドアがない! なんだこりゃ。勝手口みたいなのはあるんだが、正面玄関らしきものにドアがないのだ。いや、正確に言うと「ドアのノブがない」んだが、どうやって入っていいのかわからない。インターホンを押しても誰も出てこない。間違ったのかなあ。Fに玄関で待機していてもらい、屋敷のまわりをぐるりとまわってみる。誰もいない。村全体に人っ気がない。たぶんこれは墓からゾンビがよみがえって、住民を殺戮しまくったに違いない。だから火葬のほうがいいって言ったのに(←いつ、誰が、誰にだ)。

 

 Fがゾンビに食われているかもしれないので、玄関に戻ってみる。玄関が開いている。やはりゾンビが…とか思っていると、後ろから「ミスター」と言われて驚かされる。「お連れ様、部屋でお待ちです」。スタッフがドアを開けてくれたらしい。スタッフといっても、ここの管理人がこの屋敷に一家で住んでいるらしい。子供部屋とかまである。この人が領主なのかな…と思ったが、領主は当然もっとデカい別な屋敷に住んでるだろう。

 この建物は、ホテルでなく、あくまで「個人の家」なので、フロントはないし、各部屋にカギもかからない。したがって「家のカギ」を渡される。わーい鍵っ子だー。ノブのないドアは、カギ穴にカギを入れてドアを押すと入れる、というしくみ。内側にはノブがある。

 で、案内されて入った「部屋」というか…「この区画をお使い下さい」と言われた。二階に上がると短い通路があって、突き当たりがシャワー・トイレ室。通路の両脇に15畳くらいの寝室が一部屋ずつ。そして、30畳くらいある居間、グランドピアノ付き。すげー。これは2人ではもったいない。ジャズ研の合宿とかにいいかもしれない。うるさいか。

居間 右側奥にピアノ(白)

 スタッフ(ていうか執事?)に「明日の朝食は何時か」と聞く。「あなたは今とても重要な質問をされました」と言われる。大ゲサな奴だなあ、と思って聞いていると、「朝食はうちのママが作りますが、ママは非常に厳格な方ですので、9時半から10時の間、この間に必ず朝食をとって下さい。もし、時間の変更を希望されるのであれば、今のうちに言っておいて下さい」「…9時半でいいですよ」。朝食に遅れたりしたら何か懲罰でもあるんだろうか。

 

 その後、ミュッセルバラの街におりて飲み物などの買いだし。途中、パブを発見。「うまいモルトの店」なんてことが書いてある。歩いても行けそうだ。街のスーパーに行く。缶詰のハギスを発見したので10個ほど買う。その他飲み物買って部屋において、ホテルの駐車場に車もおいて、歩いてさっきのパプに行く。

 

 俺がパブに入った瞬間、今までガヤガヤやっていたのがいっせいに静まりかえり、いっせいに20人くらいいた客全員が俺のホウをにらみつける。テレビは大音量で競馬。客は50以上のおっさんばかり。たまにおっさんにくっついてる飲み屋のねーちゃんのような女性はなんなんだろう。カウンターでは全員立ちのみ。ものすごい場違いな所にきてしまった感を感じたが、そのようなことでくじける俺ではない。いや、こういう所こそが俺の求める酒場である。ビールをバーテンに求めると、他の客も俺が単なる客にすぎない、と判断したらしく、一瞬の緊張は解けた。俺は何だと思われたのだろう。

 Fとビールを飲んでると、客の一人が話しかけてくる。

「##$^&&~!?*#)!??%$$#@!)*&:…」

 えっ? 何? 英語? 何言ってるのかさっぱりわからん。えーい、ここはシニフィエで…

「いや、俺はギャンブルは弱いんですよ…」

 客は何も言わず、もとの場所に帰っていく。Fがその後「あの人、君たちはインヴァレスクから来たのか、と言ってたようだよ」と静かに俺にツッコミを入れる。ああ、彼が指さしてたのは、競馬のテレビ画面でなく、店の外の方向だったのか…って、聞き取れてたんだったら言ってくれよ!

 

 その後、80歳くらいのじーちゃん(アルコールは老化を促進させる、ホントはまあ50歳くらいだろう)から「お前は若いんだから座ったほうがいい」とかワケのわからない事を言われてシート席を譲られる。一緒に飲んでると「お前はすばらしい! 最高だ!」と、世界共通のヨッパライのノリになっていく。ところで、ここらへんの人はモルトウイスキーをつまみにしながらビールを飲んでいる。真似して飲んでたら俺もベロベロに酔っ払ってきた。でー。でもこの酒場は居心地がいいな。ガラは悪いが礼儀は正しい、漁師町の酒場だ。

 

 ラーメン食って帰りたいところだが、こんな田舎にそんなものないので(今考えると中華屋に行けば良かったんだが)、スパゲッティを食って帰る。

 

 門をくぐり、庭を通って宿に帰ろうとすると(門から建物まで、けっこう遠い)「誰だ!」と懐中電灯を照らされる。執事の声だ。

俺「俺らですよ、宿泊の」

執事「なんだ、あなたたちでしたか(青い顔)」

俺「何かあったんですか」

執事「いや、今誰かがウチの窓を叩いたんですよ」

俺「…ああ、墓場がすぐそこにありますからね…」

ちなみに、この日の宿泊客は俺ら二人だけだった。

(実話)

つづく

「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その3)」(デス見沢A・篇)

「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その2)」(デス見沢A・篇)

「壁に耳あり障子にメアリー!!変(その1)」(デス見沢A・篇)

「コルホーズの玉ネギ畑!!変」

「戦場のメリー・クリスマス・イン・サマー!?変」

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ドイツの科学力は世界一ィ!デス見沢・F・デス彦

ドイツの科学力は世界一ィ!変(デス見沢デス彦(A)篇)

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