ルクセンブルグ 2日目 ところで、今回の旅はいちおう学会出席ということで来たワケだが、こんな状態で学会が開かれるのか? アメリカからの参加者もけっこういたはず。まあ、あくまで「ヨーロッパ芸術療法学会」なので、全面中止ということはないと思うが。とりあえず開催地であるルクセンブルグ中央大学に行ってみる。場所わかんないのでタクシーで。街のはずれというか国のはずれにあるらしいが、ホテルから1.000ルクセンブルグフラン弱で行けた。
…着いたには着いたが、ヨーロッパの大学ってのは「街に校舎が散らばってる」みたいな感じのが多いから、まず入り口がどこだかわからない。そもそも前日の参加者登録を受けてないので、まず登録からしないといけないのだが、そこもどこでやるのかわからない。とりあえず一番近い建物にはいってみる。受付らしい女性が二人座っていたが、「私たちはバイトなので登録の場所までは知らない」という大変フランス的な対応をされる。「二つむこうの建物に行ってみてはどうか」と言われたのでそのとおりにするが、その建物にはカギがかかっていた。戻って「カギかかってたんですけど」と言うと「さー私たちにはどーしよーもないですねーバイトだし」と予想通りの返事をされる。が、そこに丁度学会の参加者がバイトの娘をくどきにやってきたとこで、その人に登録場所まで連れてってもらう。絶対にわからないような裏口みたいな所に受付があった。この大学、外はボロボロだが中は広くてきれい。日本の大学とは逆だ。
で、名前確認してプログラム渡されて登録終了。あんのじょうキャンセルが続出。知り合いのブラジル人の発表もキャンセルされていた。しかし、中には事件の前からこっち来てた人もいて、その人はしっかり発表してた。内容はあまりたいしたことはなかったけど、事件にもかかわらずちゃんと発表した、ということで誉め称えられていた。しかし、自分が海外にいる時に自分の国、しかも自分の住んでる所が災害に遭って、しかも帰れなくなってるのはヤだろうなあ。俺は飛行機飛ばなくても、イザとなったらシベリア鉄道と船ででも帰れるけど。
![]() 今回は発表者が少ないので、発表は講義方式。午前・午後に1コマ100分の2コマずつ。まるで大学の授業だが、発表の間にはティータイムとして日本のものの4倍くらいある巨大ベルギーワッフル、しかもチョコレートコーティングなどが振る舞われる。みんな食う食う。ヤセ型の人が多いのになあ。 で、その日の発表が終わると、主催者側から「では皆さん、これからカジノに集合して下さい」と言われる。カジノ? 学会で? カジノ療法? よくわからんがみんなについていく。 ![]() 「ルクセンブルグ・カジノ」と書かれてあるビルに到着。しかし「カジノ」ではないようだ。なんかアトリエみたいなとこ。他のみんなも、これから何をどうすれはいいのかわからんで、玄関付近でウロウロしていると、主催者の一人が 「えー、これからー、皆さんをー、ルクセンブルグ巡りのツアーに御招待致しますー。でー、このままでは人数が多いのでー、『英語チーム』と『仏語チーム』に分けたいと思いますー」 ザワザワザワ。あちこちから「フランス語なんてわかんねーよ」とかボソボソ声があがる。 「…あ、『仏語チーム』といっても、我々は英語も仏語も独語も出来ますんで、あくまで便宜上のものですので、フランス語できない人でも安心して『仏語チーム』にはいって下さい。そうでないと英語チームばっかりになりますので」
俺らはとりあえず『英語チーム』で出発。ぞろぞろとガイドについて歩いていく。バスにでも乗せてくれるのか…と思って歩いていく。どんどん歩く。公園みたいな所にはいる。すると、ガイドがいきなり立ち止まって史跡の説明をし出す。 え…ひょっとして、このツアーって、全部徒歩なの? 小学校の遠足かっつーの。 ![]() この公園はいちおうルクセンフルグ観光のメイン・スポットとなってるらしい。「ここは自殺の名所でもあります」などと一つ一つのスポットにガイドが説明しながらどんどん道を下る。一緒にいた参加者に「帰りのこと考えると気が遠くなるよな」と言われる。「まあその時は一緒にタクシーかなんかで」と密約しておく。 で、どんどんツアーが進んでいくと、どこからかとつぜん大声で「アッラー、アッラー」とか言う声があがる。ムスリムがお祈りでもしてんのか、と思ったがお祈りの時にそんな大声は出さないはず。そのあともしつこく「アッラー、アッラー」とか言ってる。なんか明らかに俺たちに向かって言ってるようだ。あ、例の事件で、ルクセンブルクでもさっそくムスリム差別が始まってるってか。でも学会参加者は中東からはいなかったハズだし…だいたい外見でムスリムかどうかなんてわかるワケが…あ、ひょっとして俺に向かって言ってんの? ヒゲか? アラブ系と東洋人の区別つかないとか? まあルクセンブルグには日本人も中国人もアラブ系もあんまり来ないだろうからなー。って、まあどういう理由にしろ売られた喧嘩は買わなければいけない。声の元をつきとめようと探すが、どこにいるのかわからない。それにしてもアッラーアッラーうるさい。これはムスリムじゃなくても充分アタマに来る。見つけ次第殺す。と思っていたが、顔つきかなんかで悟られたらしく、他の学会参加者から「馬鹿は相手にすんな」とたしなめられる。そうこうしているウチにツアー終了。帰りはエレベーターがあった。ホッとする。しかし帰り際「アッラー」の声の出所と思われる奴の顔を見た。厨房だった。やはり追いかけて「非西洋諸国代表」としてせめて一発くらい殴ろうと思ったが、「さあ早くエレベーターに乗って」とガイドに言われたのでおとなしく従う。 その後「カジノ」に戻ってシャンパンで乾杯となる。英語の練習もかねていろんな人に話しかけてみる。で、この人とやたら話がもりあがった。聞くと、ドイツの某大学の教授だそうだ。何の教授だかは名刺をもらったんだがよくわからない。Apl.とかHon.ってなんだ。「俺はアウトサイダーだから」とか言ってた。すげー気さくな人。ブコウスキーみたい(会ったことないけど)。俺の名刺のメルアドを見て「おお、アナーキストか! 俺はアナーキストは大好きだ」と喜んでた。ああ、ホントにアウトサイダーなんだ。
![]() で、こんなふうにデジカメで撮ったりして「日本の技術力はすごいでしょう」とか自慢すると「何を? デジカメ? 日本製だって? でもレンズ部分には『カールツァイス』って書いてあるぞ? カールツァイスはドイツの会社だぞ。ライカとかから脈々と続くドイツの技術にかなう国などあるもんか。日本製って、どこの会社…(SONYのロゴを見て)なんだ、ゾニーじゃねえか。ゾニーも他の会社の部品使って自分の製品だって言ってんのか。しょーもないなあ。やはりドイツの技術力は世界一イィィィィィ」とえんえんとまくしたてられる。 教訓:ドイツ人に工業製品の話をしてはいけない
あと経済の話とか。俺が「日本の経済はもうダメですよ」と言うと、(今の日本の経済がダメなのは世界的に有名になってしまっているらしい)「5年待て」と言われる。根拠は無いのだろうが妙に説得力があった。その後も教授はガンガンシャンパンを飲みまくり、聞いてもいない自分の成育環境とか話しはじめる。そのうち教授のヨメらしき人が来て、ドイツ語で「いいかげんにしなさい」とか言われて引きづられて帰って行った。すばらしい。明日また懇親会でお会いしましょう。 |