my LIFE as HERMIT
「インドでわしも考えた変」(その2)

(文中1ルピー=3.5円)

デリー〜バラナシ
 

 前回書き忘れたんだが、デリーの空港出た時の話。空港出てまず一番びっくりしたのが、空港前にいる宿のオヤジ達な。ホラ、よく温泉地なんかで駅降りると旅館の名前持ったオヤジが立ってたりするダロ。デリーの場合、そういうオヤジ達が空港前に一万人くらい立ってるんだ(誇張でなくてマジ)。まずこれにオオッと思ったね。そして空港タクシーの客引きも、なーんか俺の中でデジャヴがあったんだよな。何かどこかでこういう体験したなあ、と思ってたらさっき思い出した。10年くらい前のススキノだ。今はそうでもなくなったが、当時はススキノ2歩歩くと最低でも客引き一人に声をかけられた。で、断ると後ろから罵声を浴びせられたりする。インドでは断っても罵声を浴びせられることはなかったから、まだ当時のススキノよりはインドの方がマシかも。まあアジアってのはどこでも似たようなもんだっつーコトだ。

 

 でまあ、とりあえず宿についたと。まず確認すべきはトイレだろうやっぱし。インドでは紙でなくて水と左手で拭く、という話は有名だからな。インディアンくそ拭かない(差別発言)。しかし俺は自慢じゃないがトイレに入って手を洗わない。だからインディアンスタイルでは日常生活にチト支障を来してしまう。困ったなあ。インドに着いてからバタバタしてたから、そのことホテルに着くまですっかり忘れてたぜ。と思いながらトイレを確認。なんだちゃんとペーパーあるじゃん、さすが一泊100ドル、と思ったら残り1〜2回分しかない。ったくダッセーなペーパーくらい補充しておけよなホテルなんだからよとフロントに新しいペーパーを頼む。しかしやってきた新しいペーパー2ロールはどちらもやはり残り1〜2回分しかない。それでも包装されており新品らしい。そう、つまりインド人はあまり紙を必要としないので、ペーパー1ロールの長さが極端に短いのだ。これはどうしたものか。そこで考えた。インド式と非インド式の折衷案を採用する。つまりインド式に(ただし指は使わずに)水で洗った後に紙で拭く。これは完璧だ素晴らしい。紙も節約できて手も汚れない。普通のインドのホテルは水を入れるでかいバケツがあって、それに温泉の上がり湯のカップみたいのがついてて、そのカップで肛門に水をかけて洗うんだな。ちょうど便意があったので、排泄後実験してみる。

 

 まずインド式で洗う。背中の下、仙骨のあたりからトロトロと水を流す…あのー、この水で洗う方法って大腿部のウラまで濡れてしまうんですけど。ということは、水で薄まったモノが臀部から大腿後方一帯に広がってしまうということでは? ああ、何回も洗えばイイのか。しかしこれ、清潔なんだか清潔でないんだかわからんな。すすぎ水が服につきそうな気もするし。釈然としない気持ちで最後に紙で水気をぬぐう。これでやっと拭いた気になる。でもなんか聞く所によると、日本に帰ってもこのスタイル(しかも紙なし)でやってるインドかぶれの奴がいるっていうじゃん。ウオシュレット買えよ、ウオシュレット。

 

 機内食が3回も出たからハラはいっぱい。で、いつもだったらシャワー浴びて酒飲むんだけど、ヒンドゥーでは酒は御法度(法律的にはオーケーだが宗教的にダメ。牛肉と同じ)。だからルームサービスのメニューに酒はないし、街にも売ってない。まあアングラでは売ってるらしいがそこまでして酒飲みたくない。のでシャワー後はミネラルウオーターと日本から持参してきたアモバンを服用。アルコール無しのアモバンも久しぶり。実に健康的に寝れた。

 

 次の日はバラナシに出発。当初は汽車でいこうかとも考えたが、また10時間も座ってるのはヤなんでちゃっちゃと飛行機を予約しておいた。前の日にホテルに送ってくれたリクシャードライバーにタクシーで迎えに来てもらうように頼んでおいた。空港まで800ルピーだと言われる。プリペイドの4倍だ。交渉しても1ルピーも負けてくれない。しかし面倒くさいのでそれでオーケーとする。この選択は結果的に正解だった。このドライバーはヒンドゥーではなくシーク教徒だったのだ。シークのドライバーは高い金を請求するが、確実に目的地まで連れて行ってくれる(そうでない奴もいるかもしれないが)。ヒンドゥーは交渉で安くなるが、途中で自分と契約している土産物屋とかに寄ったりして、運が悪いと飛行機に遅れる。シーク教徒の見分け方は簡単。ターバン巻いて長い髭を生やしてる笑わない奴がそうだ、たぶん。ヒンドゥーとシークは仲が悪そうだった。ていうかシークが差別されてるっぽい。まあ少数派だからな。

 

 シークのタクシーは当然のようにホテルから一直線にデリー国内線ターミナルにつく。途中のトラブルを想定してたので、空港でかなり時間が余った。ところでどのインドのガイドブックにも「空港は決して写真に撮らないように」ということが書いてある。インドは準戦争体制にあるので空港の写真をとると軍が出てきて、運が悪いと逮捕されてしまうらしい。嫁さんの高校の先生も前にインド旅行したときに知らずに空港で写真撮影して、軍にフィルム没収されたそうだ。

というわけで、試しに空港で写真をとってみました。


(しまった露出オーバーだ)
これはデリー国内線ターミナル。一番奥の柱の前にいるのが軍人さんですね。


デリー空港内の飛行機に向かうバスの中

 

 うはは楽勝。まあここらへんで許してやるか。この後無事飛行機に乗り込む。出発時刻になった。…まあ予想していことではあるが、全く飛行機は動かない。機長のアナウンス。「えー、当機は約一時間後にベナレス(=バラナシ)に向けて出発いたします」当然のように言う。飛ばないうちに機内食が出てきた。インドでは一時間程度のフライトでもしっかり機内食が出る。当然カレー。食べ終わった頃に一時間経過し、機長のアナウンス。「えー、当機は約一時間後にベナレス(=バラナシ)に向けて出発いたします」当然のように言う。これぞインド悠久の時。乗客(90%以上白人旅行者)から漏れるため息。

 まあそれでも3時間後には飛行機は飛んで、約一時間後無事バラナシについた。バラナシの空港も写真にとろうとするとどこからか軍が出てきた。捕まった。「ソーリー、写真は禁止でしたね」と言うと比較的すんなり釈放。でも写真は諦める。さすがにこの時はちょっとドキドキした。

 

 バラナシのホテルも日本から予約していた。こっちは連泊なのでずっとストってことはないだろう。ただタクシーは懲りたのでバスにてバラナシ市街までいくことにする。バスなら客引きもいないだろう。甘かった。またわけのわかんないアンチャンがバスに乗り込んできて「このゲストハウスに泊まらないか」と言ってきた。まあデリーの奴等ほどしつこくはなく、「俺は既にこのホテルを予約している」とバウチャーを見せるとあっさり引き下がったが。

 春先の帝国郊外のような風景を抜け、バラナシ市街にはいる。バスはさっきのアンチャンの紹介したホテルにいったん寄り、そこで乗客の70%が降りる。バラナシでも旅行者は宿を予約していないのが普通らしい。まあそれでもバスは一応終点まで行く。バスが止まると乗車口にアリのようにリクシャーが群れる。そのうちの一つにのると「いいゲストハウスあるよ」インドでは交通機関何に乗っても結局同じかい! まあ今回はちゃんと目的のホテルにはついたが。バラナシはデリーほど人間がスレてはいないらしい。同じインドでも違うもんだ。当たり前か。ホテルでチェックインしようとすると、いきなりフロントに支配人を呼ばれた。支配人に「ちょっとこちらに」と言われる。

「あなたはどういう目的でバラナシに来たのか」
「観光だ」
「日本人か」
「そうだ」
「車を運転するつもりか」
「その予定はない」
「何か武器をもっていないか」
「…そんなものはない」
 その他こまごまと質問された後、
「失礼しました。どうぞチェックインして下さい」
 どうやら今度はホテルが高級すぎたらしい(一泊はデリーのホテルよりずっと安いのだが…)。そして俺の姿がよっぽど怪しかったらしい。まあこれは逆にいうと、このホテルが安全であるということだ。…昨日も今日も疲れた。ガンガーには明日行こう。今日はシャワー入って寝る。

つづく

「インドでわしも考えた変」(その1)

「隣の印度人変」

「大阪変」「ハッカー変」

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