第4話 いなかのねずみととかいのねずみ

 ここは、あるきたのくににある、とってもどいなかのまち。このまちで、いっぴきのねずみが、ほそぼそといしゃをやっておりました。そのねずみは、こうがくのうぜいしゃばんづけに、のるほどには、おかねをかせいではいませんでしたが、たくぎんがはたんして、どんぞこにある、きたのくにけいざいの、なかにおいては、まあまあのくらしをしていました。

 

 あるひ、そのねずみに、むかし、だいがくのともだちで、いまはとかいにすんでいるねずみのいしゃから、いっつうのてがみがきました。

 

「であ いなかのねずみ

やあやあ。いなかのねずみくん。あいかわらず、ひぶんかてきなせいかつを、しているのだろうなあ。こんど、そっちのびょういんにとうちょくにいくから、どこかのみにいこうよ。そんないなかのことなんて、ぼくはしらないから、いいみせをおしえてよ。まあどうせ、たいしたみせはないだろうけど。おかえしに、ぼくの、そふぃすてぃけいてっどされたはなしの、ひとつでもきかせてあげるから、とかいのくらしを、うらやましがるといいよ。

ゆあーず しんせれりい,とかいのねずみ」

 

 ああ、なんとむかつくぶんしょうなのでしょう。だいたい、とうちょくにくるというのに、のみにいってもいいのでしょうか。でも、ひとのいい、いなかのねずみは、しんせつにも、みせをよやくして、ともだちの、とかいのねずみと、いっしょにのみにいくことにしました。

 

 とかいのねずみは、それはもう、くーるなくるまで、いなかにきたので、いなかのひとびとの、しせんをあつめまくりです。ていうか、ういてます。いなかのねずみのところにくると、ひとしきり「さいきん、どう」などという、わけのわからない、いっぱんてきなあいさつをかわし、みせにのみにいきました。

 

「ふーん。いちおう、こりょうりや、なんてものもあるんだ。いなかのくせに」とかいのねずみは、いうことがいちいちむかつきます。

 

「ここはね、いっけんたかそうだけど、やすいんだよ。おなじりょうりでも、とうきょうでたべるとここのごばいはとられるね」いなかのねずみは、じまんそうにそういいましたが、

 

「そんなの、きまったりょうりだけでしょ。とうきょうは、どんなものでもたべられるの。せんたくのじゆうがあるの。そのぶんがたかいんだよ。それに、たべるだけがじんせいじゃない。きたとき、まちのなかを、ちょっとみたけど、このまち、ほんやとか、CDやとか、ぱそこんやとか、あんまりないじゃない。そこらへん、どうしてるわけ」

 

「ぱそこんは、そふまっぷもさくらやもTぞーんもないけど、いちおう、でぃすかうんとやはあるよ。ほんやCDは、さっぽろや、とうきょうにいったときに、まとめてかう」

 

「だったら、とかいにすめばいいでしょう。とかいはいいよ。なんでもあるし。‥このりょうりはまあまあうまいね。あ、じびーるがあるのか。でも、いまや、じびーるなんてとかいだってのめるだろう。どうだ、きみもだいがくに、もどってこないか」

 

「そのはなしかい。それは、ぼくは、ことわったはずだけど。ここは、いなかだけど、ぼくはべつに、せいかつには、ふじゆうしてないよ。とかいには、たまにいく、ていどでいいよ。それに、ここのひとたちと、せっかくきづいた、にんげんかんけいが、むだになるだろ」

 

「まあ、そういう、うちわなはなしはやめよう。どくしゃがついてこれなくなる。で、まあ、りょうりはうまかったよ。で、つぎ、もちろんあれだろうねえ」

 

 いなかのねずみは、とかいのねずみのいう「あれ」ってのがわかりません。「あれってなに」いなかのねずみがききかえすと「きまってるだろう。おんなのこのいるところだよ」

 

 いなかのねずみはこまりました。そういうところの、ばしょはしっていますが、あるりゆうがあって、はいったことがないのです。でも、「なんだ、このいなかには、そういうみせもないのか」といわれたいなかのねずみは、つい「そんなものくらい、あるよ」とこたえてしまい、けっきょくいくはめになってしまいました。

 

「ふーん。ここのみせ、たうんしで、みたことある」

「あ、とかいのねずみくん、ここはやっぱり、やめよう」

「いまさらかえれないよ。だいじょうぶだって。さ、はいろはいろ」

はいったしゅんかん、いなかのねずみの、ふあんはてきちゅうしました。かべにはられている、こんぱにおんのおねえちゃんの、しゃしんのなかに、じぶんのかんじゃをみつけてしまったのです。

 

「おきゃくさま、ごしめいのかたとか、ございますか」じゅうぎょういんがききました。

「ああ、しめいはない。はじめてだから。そっちで、いいこ、えらんでよ」「かしこまりました」

「これは、きゃばくらだよねえ‥とかいのねずみくん、よくこういうとこ、いくの?」

「きゃばくら? ちがうよ。もともとは、きゃばくらだったんだけど、いまはぴんさろになってるよって、たうんしに、かいてたけど」

「えっ? ぴんさろ? いつのまにかわったんだ? ぴんさろって、あんなことや、こんなこともしてくれるという? とかいのねずみくん、すぐにでよう」

「えーなんで? もうおねえちゃん、きちゃったよ、ほら」

「あれ? せんせい? せんせいじゃないですか! あー、きてくれたんですね」

「ああ、ここ、まちがってはいったんだよ。いまかえるから。とかいのねずみくん、いくよ」

 

 

「いったいなにがあったんだよ、いなかのねずみくん」

「あのこ、おれのかんじゃなんだ。しかもあのこは、とてもくちがかるいから、ぼくがあそこで、なにかえっちなことをしたら、たぶん5びょういないに、まちじゅうにそのうわさがひろまるだろう。それはとうぜん、ぼくのおくさんのみみにもはいるし」

「なるほどね。だから、いなかはだめなんだよ。うーん、そしたらとりあえず、らいしゅうにでも、ぼくのところにあそびにおいでよ。あそびにくるんだったらいいだろ。いろいろつれてってあげるよ」

 

 

 

 いっしゅうかんがたち、こんどは、いなかのねずみが、とかいのねずみのところにあそびにいきました。いなかのねずみは、とかいのねずみのへやにあがりました。

「どうだい、くーるなへやだろう」

「うん、かっこいいね。‥あれ? おくさんは? こどもは?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

「あ、それはいいんだ、いいんだ。で、きょうはどこにつれていってくれるんだ?」

「いろいろあるよ。このまえはわしょくだったから、こんどはやきにくをたべよう」

 

 ということで、やきにくやにいくことになりました。

「‥うん。うまい。こんなにくは、たしかに、いなかにはない。」いなかのねずみがよろこんでいます。「そーだろ、そーだろ」とかいのねずみは、じまんげです。

「本もCDもいっぱいかったし。いやあ、じょん・ぞーんの " まさだ " って、もう10かんまででていたんだなあ。しらなかったよ。でも、とかいは、こうやってたまにくるのがいいんだよ」

「ふふふ。そうかな? じゃあ、おなかもいっぱいになったし、つぎのみせにいこう」

「つぎのみせって、またえっちなとこか?」

「ふふふ、いけばわかるよ」

 

 いなかのねずみは、とかいのねずみのせったいを、まあ、たのしんでかえってきました。

 

 

 それからしばらくたったあるひのこと、「ねえ、このしんぶんきじ、みた?」ねずみのおくさんが、いなかのねずみにいいました。いなかのねずみは、ぱそこんで、のんきにねっとをやっています。

「なんかおもしろいことでも、かいてるのかい?」

「『だいがくびょういん・きんむのいし、てれくらで、じょしこうせいと、えんじょこうさい』だって。ああ、なまえまでのってる‥とかいのねずみ。あれ、これ、きみのともだちじゃ、なかったっけ? あ、まだつづきがある‥『とかいのねずみようぎしゃのほかに、もういちめい、じょしこうせいに、みだらなこういをした、じんぶつがいる、とのじょうほうがあり、とうきょくでは、そのじんぶつの、ゆくえもおっている』」

 

*この話はフィクションであり、実在の人たちとはあまり関係ありません。

第一話 ハデスとペルセポネ

第二話 精神科医アスクレピオス(蛇使い座)

第三話 林檎殺人事件( from 創世記)

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