ここは、あるきたのくににある、とってもどいなかのまち。このまちで、いっぴきのねずみが、ほそぼそといしゃをやっておりました。そのねずみは、こうがくのうぜいしゃばんづけに、のるほどには、おかねをかせいではいませんでしたが、たくぎんがはたんして、どんぞこにある、きたのくにけいざいの、なかにおいては、まあまあのくらしをしていました。
あるひ、そのねずみに、むかし、だいがくのともだちで、いまはとかいにすんでいるねずみのいしゃから、いっつうのてがみがきました。
「であ いなかのねずみ やあやあ。いなかのねずみくん。あいかわらず、ひぶんかてきなせいかつを、しているのだろうなあ。こんど、そっちのびょういんにとうちょくにいくから、どこかのみにいこうよ。そんないなかのことなんて、ぼくはしらないから、いいみせをおしえてよ。まあどうせ、たいしたみせはないだろうけど。おかえしに、ぼくの、そふぃすてぃけいてっどされたはなしの、ひとつでもきかせてあげるから、とかいのくらしを、うらやましがるといいよ。 ゆあーず しんせれりい,とかいのねずみ」
ああ、なんとむかつくぶんしょうなのでしょう。だいたい、とうちょくにくるというのに、のみにいってもいいのでしょうか。でも、ひとのいい、いなかのねずみは、しんせつにも、みせをよやくして、ともだちの、とかいのねずみと、いっしょにのみにいくことにしました。
とかいのねずみは、それはもう、くーるなくるまで、いなかにきたので、いなかのひとびとの、しせんをあつめまくりです。ていうか、ういてます。いなかのねずみのところにくると、ひとしきり「さいきん、どう」などという、わけのわからない、いっぱんてきなあいさつをかわし、みせにのみにいきました。
「ふーん。いちおう、こりょうりや、なんてものもあるんだ。いなかのくせに」とかいのねずみは、いうことがいちいちむかつきます。
「ここはね、いっけんたかそうだけど、やすいんだよ。おなじりょうりでも、とうきょうでたべるとここのごばいはとられるね」いなかのねずみは、じまんそうにそういいましたが、
「そんなの、きまったりょうりだけでしょ。とうきょうは、どんなものでもたべられるの。せんたくのじゆうがあるの。そのぶんがたかいんだよ。それに、たべるだけがじんせいじゃない。きたとき、まちのなかを、ちょっとみたけど、このまち、ほんやとか、CDやとか、ぱそこんやとか、あんまりないじゃない。そこらへん、どうしてるわけ」
「ぱそこんは、そふまっぷもさくらやもTぞーんもないけど、いちおう、でぃすかうんとやはあるよ。ほんやCDは、さっぽろや、とうきょうにいったときに、まとめてかう」
「だったら、とかいにすめばいいでしょう。とかいはいいよ。なんでもあるし。‥このりょうりはまあまあうまいね。あ、じびーるがあるのか。でも、いまや、じびーるなんてとかいだってのめるだろう。どうだ、きみもだいがくに、もどってこないか」
「そのはなしかい。それは、ぼくは、ことわったはずだけど。ここは、いなかだけど、ぼくはべつに、せいかつには、ふじゆうしてないよ。とかいには、たまにいく、ていどでいいよ。それに、ここのひとたちと、せっかくきづいた、にんげんかんけいが、むだになるだろ」
「まあ、そういう、うちわなはなしはやめよう。どくしゃがついてこれなくなる。で、まあ、りょうりはうまかったよ。で、つぎ、もちろんあれだろうねえ」
いなかのねずみは、とかいのねずみのいう「あれ」ってのがわかりません。「あれってなに」いなかのねずみがききかえすと「きまってるだろう。おんなのこのいるところだよ」
いなかのねずみはこまりました。そういうところの、ばしょはしっていますが、あるりゆうがあって、はいったことがないのです。でも、「なんだ、このいなかには、そういうみせもないのか」といわれたいなかのねずみは、つい「そんなものくらい、あるよ」とこたえてしまい、けっきょくいくはめになってしまいました。
「ふーん。ここのみせ、たうんしで、みたことある」 「あ、とかいのねずみくん、ここはやっぱり、やめよう」 「いまさらかえれないよ。だいじょうぶだって。さ、はいろはいろ」 はいったしゅんかん、いなかのねずみの、ふあんはてきちゅうしました。かべにはられている、こんぱにおんのおねえちゃんの、しゃしんのなかに、じぶんのかんじゃをみつけてしまったのです。
「おきゃくさま、ごしめいのかたとか、ございますか」じゅうぎょういんがききました。 「ああ、しめいはない。はじめてだから。そっちで、いいこ、えらんでよ」「かしこまりました」 「これは、きゃばくらだよねえ‥とかいのねずみくん、よくこういうとこ、いくの?」 「きゃばくら? ちがうよ。もともとは、きゃばくらだったんだけど、いまはぴんさろになってるよって、たうんしに、かいてたけど」 「えっ? ぴんさろ? いつのまにかわったんだ? ぴんさろって、あんなことや、こんなこともしてくれるという? とかいのねずみくん、すぐにでよう」 「えーなんで? もうおねえちゃん、きちゃったよ、ほら」 「あれ? せんせい? せんせいじゃないですか! あー、きてくれたんですね」 「ああ、ここ、まちがってはいったんだよ。いまかえるから。とかいのねずみくん、いくよ」
「いったいなにがあったんだよ、いなかのねずみくん」 「あのこ、おれのかんじゃなんだ。しかもあのこは、とてもくちがかるいから、ぼくがあそこで、なにかえっちなことをしたら、たぶん5びょういないに、まちじゅうにそのうわさがひろまるだろう。それはとうぜん、ぼくのおくさんのみみにもはいるし」 「なるほどね。だから、いなかはだめなんだよ。うーん、そしたらとりあえず、らいしゅうにでも、ぼくのところにあそびにおいでよ。あそびにくるんだったらいいだろ。いろいろつれてってあげるよ」
いっしゅうかんがたち、こんどは、いなかのねずみが、とかいのねずみのところにあそびにいきました。いなかのねずみは、とかいのねずみのへやにあがりました。 「どうだい、くーるなへやだろう」 「うん、かっこいいね。‥あれ? おくさんは? こどもは?」 「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」 「あ、それはいいんだ、いいんだ。で、きょうはどこにつれていってくれるんだ?」 「いろいろあるよ。このまえはわしょくだったから、こんどはやきにくをたべよう」
ということで、やきにくやにいくことになりました。 「‥うん。うまい。こんなにくは、たしかに、いなかにはない。」いなかのねずみがよろこんでいます。「そーだろ、そーだろ」とかいのねずみは、じまんげです。 「本もCDもいっぱいかったし。いやあ、じょん・ぞーんの " まさだ " って、もう10かんまででていたんだなあ。しらなかったよ。でも、とかいは、こうやってたまにくるのがいいんだよ」 「ふふふ。そうかな? じゃあ、おなかもいっぱいになったし、つぎのみせにいこう」 「つぎのみせって、またえっちなとこか?」 「ふふふ、いけばわかるよ」
いなかのねずみは、とかいのねずみのせったいを、まあ、たのしんでかえってきました。
それからしばらくたったあるひのこと、「ねえ、このしんぶんきじ、みた?」ねずみのおくさんが、いなかのねずみにいいました。いなかのねずみは、ぱそこんで、のんきにねっとをやっています。 「なんかおもしろいことでも、かいてるのかい?」 「『だいがくびょういん・きんむのいし、てれくらで、じょしこうせいと、えんじょこうさい』だって。ああ、なまえまでのってる‥とかいのねずみ。あれ、これ、きみのともだちじゃ、なかったっけ? あ、まだつづきがある‥『とかいのねずみようぎしゃのほかに、もういちめい、じょしこうせいに、みだらなこういをした、じんぶつがいる、とのじょうほうがあり、とうきょくでは、そのじんぶつの、ゆくえもおっている』」 |