ここは、とある山の中にある永伝寺というお寺。二人の小坊主と和尚さまからなる小さい小さいお寺ですが、小坊主たちは和尚さまを尊敬し、修行にはげむ毎日を送っていました。
しかし、そんなある日のこと、和尚さまは、インターネットであまりにも言いたい放題のことを言ったため、総本山から呼び出しをくらってしまいました。呼び出しを食らった以上、行きたくはないけど一応行かないと後が面倒クサイため、一応行くことにしましたが、寺を留守にするわけにはいきません。だいたいそんな恥ずかしい所を小坊主たちに見られたくありません。
しかし、小坊主たちがこのお寺で修行するようになってから、まだ日にちが経っていなかったため、和尚さまは、まだ子供の、二人の小坊主にお寺の留守番をさせるのが不安でしょうがありませんでした。 そこで、和尚様は、二人の小坊主、阿多無と韋富に向かって言いました。
「よいか、阿多無よ、韋富よ。わしは、これから日本の仏教の、いや世界の仏教の運命を左右する、重大な会議に出席しなければいけなくなった。その会議にわしが出席しなければ時は末法となり天使のラッパが鳴ってハルマゲドンとなり宇宙はビッグクランチを迎えてしまうという大変なことになってしまう。だからわしは、世界人類のため、これから総本山に行かなければならない。そこで、お前達にはこの永伝寺の留守番をしてもらわなければいけないのじゃが‥」
すると、阿多無が答えました。 「はい、和尚様! 留守番は任せておいて下さい! 私と韋富がいれば、どんな盗賊も、この寺には一歩も入らせません!」
「いやいや、そんなに気張らなくともよい、阿多無よ‥この寺には盗まれるようなものなどないからのう。‥あっても、本堂にあるあの仏像くらいか。あれは国宝に指定されておるからのう。まあでも、そんなに無理せんでも、盗賊が来たらすぐに逃げることじゃ」
「いえ、それであったら留守番の意味がありません! 仏像は、私が命に変えても守って見せます! 安心して、人類のための会議に行って来て下さい! 私達のことは御心配なく!」
「(まあ、こんなボロ寺に忍び込む盗賊もおるまい‥)‥まあよいわ。ではわしは行くからの。あ、一つ言い忘れたことがあったが、この寺の境内の端の方に、林檎の木がある。あの木になる林檎は、砒素と青酸とモアスレンダー(クレゾール)を含んだ土壌に育ったため、一口食べただけで死んでしまうという、恐ろしい林檎じゃ。決して口にしてはならぬぞ」
阿多無は、素直に「はいっ、和尚さま!」と答えましたが、その時韋富が和尚さまに向かって尋ねました。 「和尚さま、そんな危険な木だったら、なぜ切らないでそのままにしておくんですか?」 「うっ! ‥えーと‥たぶん、切ると恐ろしい祟りがあるとか‥ええい、そのような質問はしてはならぬ! バチカンから文句が来るぞ! イスラエルからも来るかもしれんぞ! ICQを覗かれても知らぬぞ! ‥とにかく、わしはもう行く。とにかく、あの林檎は食べてはいかん。わかったな」
こうして、和尚さまのいない間、阿多無と韋富の二人が永伝寺の留守番をすることとなりました。真面目な二人は、和尚様がいなくても、しっかりと日課を守り、修行を怠りませんでした。
留守番をして何日めかに、お寺に、和尚さまを尋ねてお客さんが来ました。その時丁度、韋富は玄関の掃除をしていました。 「ちょっとそこの小坊主さん。和尚さまはいらっしゃるかね」 「和尚さまはしばらく帰ってきません。どういった御用でしょうか」 「あ、いらっしゃらないのですか‥困ったな‥勝手にあの林檎を収穫していくわけにもいかないし‥」 「林檎? あれは猛毒ですよ? あんなものを何に? まさか、夏祭りのカレーに‥」 「これこれ、そんなことを言っているとサーバーからクレームがつくぞ。‥毒だって? 何を言っておる。あの林檎は世界でも珍しい林檎で、ここらへんの土壌でしか育たないから、私が和尚に無理を言って土地を貸してもらっているのだ。あの林檎の美味なることは、遠くフランスのヌーベル・キュイジーヌにも使われている程であるぞ? まあよい。そんなにすぐに腐るものでもあるまい‥また来るとしよう。お邪魔したね」
そのお客さんが帰ったあと、韋富は今まで遠ざけてきたあの林檎が、異常に気になるようになりました。和尚さまは毒だっていってたけど、そういう理由だったのか‥。どんな味なんだろう。一個だけだったら解らないよね。そう思い始めると韋富は、もうあの林檎が食べたくてどうしようもなくなり、とうとうその木から林檎をもいで、食べてしまいました。
阿多無は、ちょうど韋富が林檎を食べた瞬間、その木のところにやってきました。韋富の様子が変だったので、あとをつけてきていたのです。 「おい、韋富、何をやっているんだ! それは猛毒だぞ? 早く吐き出せ、早く」 「‥う、う‥」 「ああ、ほら、だから早く吐き出せって!」 「うまいー!(ベタなギャグですいません) これ、毒じゃないよ。世界でも珍しい林檎なんだって。ほら、阿多無も食べてごらん」
遅効性の毒だってあるんだぜ、と阿多無は思いましたが、すでに韋富は林檎を食べてしまったあとでした。そして、実は阿多無と韋富は、ぁゃιぃ関係(詳細は省く)だったので、韋富が死ぬんだったら自分も死のう、と思い、阿多無もその林檎を食べてしまいました。でも、 「うまいー!」 「だしょ? これならいくらでも食べれる。一個も二個も同じだよね」 といって、結局、二人はその木になっていた林檎を、全部食べてしまいました。
「‥韋富、何も全部食わなくったっていいだろ、どーすんだよ、これ」 「阿多無の方がたくさん食べてたクセに‥でも、どうしよう、本当に‥あ、阿多無、あれやってよ、あれ。いい知恵が出るんでしょ」 「あ、あれか‥。ちょっとやってみるか」
阿多無は座禅を組み、両手の人さし指をなめて頭にこすりつけ、黙想しました。 ポク、ポク、ポク、ポク、ポク、チーン。 「そうだ! こういう方法があった!」
ところで和尚さまは、総本山でこってりイヤミを言われてきましたが、そんなことは屁とも思わず、次の言いたい放題のネタを考えつつ、永伝寺に帰ってきました。するとびっくり! 大事な林檎の木が、まるはだかになっているではありませんか! 和尚さまはびっくりして、本堂に走っていきました。すると、そこには倒れている阿多無と韋富と、そして砕けてしまった国宝の仏像がありました。和尚さまが阿多無にかけよると
「こ、これはどうしたことじゃ! 阿多無、いったい何があったのじゃ!」 「あ、和尚さま‥申し訳ありません‥和尚さまの留守中、盗賊がやってきて、あの国宝の仏像を盗もうとしていた所を私が取り押さえて‥でも、賊と組み合ってる最中に、仏像があのように壊れてしまい‥和尚さまの大切にしている仏像を守りきれなかったお詫びに、あの毒林檎を食べて死のうと思ったのです‥」
「‥ん‥こりゃ一本とられたわい‥ とでもワシが言うと思ったのかボケ! 仏像ワザと壊したのお前だろ。これ、よっぽど高いところから落としたりしないと、こんな風にはならね−よ! 一休さんじゃねーんだ! お前ら、二人とも破門ね」 こうして、阿多無と韋富は、永伝寺を追われてしまいました。 |