EMPEROR SOLDIER

FUNK FUJIYAMA!変(その1)


注:ジュネーブ条約により、この話はフィクションだと思って読まれることを希望します。

一日目 H13.10.4

 

 あれ、研修の話、このコーナーでやんの? 前の市民オケの話はどーなった? などと思ってはいけない。市民オケなんざーとっくの昔にヤメちまったっつーの。やっぱ市民オケ程度じゃ俺様とはレベルがゼンゼン違うし。俺のレベルの方が低いんだけど。

 そんな事はどうでもいい。今回、俺はとある非武装軍事医療組織の一兵卒として入隊訓練を受けることとなった。まさにソルジャーである。己の魂を鍛え上げる軍事訓練である。軍事訓練であるからにはサバイバルに必要充分なるアイテムを忘れずに所持していかねばならない。サバイバルに真っ先に必要なものと言えば、そう、それはもちろんゲームボーイである。他にも忘れ物がないか前日のホテルでチェック。薬類、資料ファイル(英語)、衣類、下着、新宿某所で買ったエロぼん、同じく新宿西口の路上で100円で買ったモーニングとマガジン、携帯のウイスキー、ソウルフラワーユニオンなどのCDとCDウオークマン、etc、ていうかまあしょせんは医療機関の研修だし、たいしたこたーねーだろーとかタカくくって富士急行のバスにて富士山の研修サティアンに向かう。

 

 サティアン到着。玄関に書かれていたプログラムとかは英語だったが、受付はどこをどー見ても日本人であったので日本語で「あ、受付はここですか?」「あ、お待ちしておりました、同室者の方はもう先に着いてますので部屋の鍵は空いてます」と受付を済ます。二人部屋だったか。部屋の番号は106。参加費38,000円くらい払う。一週間を38,000円で過ごすのは高いか安いか。「授業料」を含めると安いか。かんけいないが俺は大学時代は1ヶ月一万円で暮らしていたこともある。

 

 部屋にはいる。

 俺「よろしく」

 同室者(日本人)「よろしく」

 二人「………」

 これにて本日の同室者との会話が全て終了する。

 

 「大会議室」にてオリエンテーション開始。以後、一日のほとんどをこの「大会議室道場」にて過ごすこととなる。まず講師紹介。まず本部から直々に派遣の教官、本名は知ってる人がいたらヤバいので仮に「カール・セーガン」教官としておこう。もう一人、コロンビアから、これも仮名で「ハンニバル・レクター」教官。後から聞いた話では、二人とも偉い、ていうか、この組織で何が偉い順なのかよくわからんが、とにかく偉い人なんださうだ。もちろん偉そうな態度などは終始二人とも全くとることはなかったが。常に緊張を強いられる、というか、これ以後、講義→ビデオ→ディスカッション→発表or実技、という輪廻が未来永劫朝9時から夜10時までメシと10分くらいのティータイム以外フルタイムで行われる。予備校の合宿でももっと楽かもしれない、ということを知るのはまだまだ先の事であった。

 

 名簿により班構成が既に決まっていた。4つの班で、3〜4人の日本人+一名の外国人、という編成。日本以外からは、中国、香港(いちおう名残りで別組織)、ポリネシアからの参加。ウチの班は全部で4人(ホントは5人だったハズだが、キャンセルした人がいたみたいで、名簿のそこんとこだけ、どんなに透かしても名前が全くわからないほど厳重に黒く塗りつぶされていた)で、日本人3人とポリネシア人一人。ニュージーランドの近くのある島(知らなかった)からボランティアとして来たそうだ。「Noi/Moi」などという不可思議な英語を使う。「その島って、独立してんですか」と問うと「実質は独立してますね」というよくわからない答えが返ってくる。その他「ニュージーランド航空って、経営ヤバいんですってね」「やっぱ火の神信仰してんすか」(これ、最初、俺は"God of Fire"と言ってケゲンな顔をされたが、"Spirit of Fire"と言い替えたら「そう、そう」とうなずかれた。Godは唯一神でした。したがって、日本も八百万の「神の国」でわなくて「精霊の国」が正しい)などと次々に失礼な質問をかまして親交を深める。

 

 あと、同じ班の日本人にはエチオピアに二年いたあと東ティモールに先週までいた産婦人科医とか、メキシコに4年いた看護婦(以下『メヒ子』とする)とか、なんか海外NGOで働いたことネエのって俺だけって感じ? みたいな? ていうか? あと一人はコンピューター技師かなんか、素性がよくわからない。

 東ティモールの医師(以下「東さん」とする)に質問。「どこのNGOで行ったんですか?」「クリスチャン系のね、×××××」「あ、その人たち、アフガンで異教を宣教してたってタリバンにつかまってましたよ」「あ、あれは馬鹿。わざわざ『クリスチャンでーす』って旗かかげて行ったんだから。私だったら、『私は仏教徒でーす』とか言って入っていくもん」って、仏教でも異教だからダメなんじゃないかなあ。要するに他の宗教の積極的なアピールをしなければいいのでは。

 

 で、最初の講義では、教官にジョン・レノンの「イマジン」のビデオ見せられて、「私たちの行動はdreamかもしれませんが、そんなこと承知の介でやってんです」みたいな事を言われて初っぱなから洗脳が始まる。しかしここで俺の「洗脳防御システム"コギトエルゴスム君"」を作動させておくとここに何しに来たのかわかんなくなんので、とりあえず「すべてを受け入れるモード」にしておく。

 そのあと講義で何やったんだっけかなあ。自己紹介ひととおりやったあと、なんか講義やってたんだ…あ、組織の理念とかそういうやつ。中立とか。だから貿易センターの事件も「テロ」とは言わないんだって。「テロ」と言うと、それはアメリカ側の見方になってしまって「中立」じゃなくなるから、だそうだ。「9.11事件」という言い方をする。「2.26事件」みたいだ。

 

 で、初日の打ち上げ(結局毎日打ち上げが続いた)。カール・セーガン教官は娘をつれてきていた。なんとなく似てたから愛人とかでなくてホントに娘なんだろう。ちちがでかかった(セクハラ発言)。ふーん、どーせ、もー教官も娘も日本にいないし日本語も読めないからこういうこと書いてもいーんだもんねー。中国と香港の人と会う。どっちとも日本人と見分けがつかないが、英語がうまいのが香港人。服のセンスとかふるまいがなんか古くさいのが中国人。和室にてカールセーガン教官と話してみる。よし、今こそ先月ルクセンブルグで覚えたフランス語を…ダメだー、シル・ブ・プレとメルシー・ボクーしか出てこね〜! とりあえず英語で、ヨーロッパ人なのによく和室に耐えられますね、と言うと「いや、私は先週までイランにいたからね、イランもカーペットだからここと同じくアグラだよ」「イランってどんな所でしたか」「(遠くを見る目で)ファンタスティックな人々だったね〜」ヨーロッパ人から見たらトルコから東は全部ファンタスティックなんじゃねーのか、とツッコミを入れたくなったが教官なのでヤメておく。

 

 日本支部の国際部の人(女性、ちさすがにこの人には読まれる恐れがあるので以下自粛)に今現在(H13.10/4)のアフガン状況を聞いてみる。「アフガン、今、行くところ空いてますかね〜、俺、せっかくヒゲもはやしてんだし」「えー、アフガンですかー? 今の所平和ですよー。マスコミが勝手に騒いでるだけで。だから今のところアフガンはないですね。パキスタンからは二人ほど要請きてますけど」「パキスタンでもいーんですけど」「えー、でも精神科医はねえ〜、ちょっとわからないですねー」なんとなく脈なし。

 

 ロビーにピアノがあった。「お前は音楽療法やってんたろ、なんか弾いてみれ」とカールセーガン教官に言われる。とりあえず弾いてみる。西部劇の幌馬車に積んであったピアノのようにチューニングがデタラメだったのでセロニアス・モンクを弾いてみる。ちょうどよかった。教官に「へー、ホントにピアノ弾けるんだ」などと失礼なことを言われる。何、ここはやっぱり「戦場のメリークリスマス」じゃないかって? ちっちっち、それは最終日までとっておくもんよ。

 

つづく

本来の市民オケ変の第一回目だけ

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